永年勤続表彰の記念品は、渡し方を間違えると給与として課税されます。「気持ちだから」と現金や商品券を渡した場合、その全額が課税対象になり、会社には源泉徴収の義務が生じます。従業員も手取りが減ります。よかれと思った表彰が、双方にとって面倒な結果になることがあります。
先に結論:非課税として扱えるのは会社が選んだ現物の記念品だけです。現金、商品券、そして従業員が自由に品物を選べる形式は、いずれも給与として課税されます。国税庁は「自由に選べるなら、金銭を渡して買わせたのと同じ」という考え方を示しています。
※本記事は国税庁が公表している通達・質疑応答事例に基づく一般的な整理です。個別の適用可否は、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。
課税される渡し方・されない渡し方
| 渡し方 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 会社が選んだ現物の記念品 | 非課税で差し支えない(要件を満たす場合) | 所得税基本通達36-21 |
| 旅行・観劇への招待 | 非課税で差し支えない(要件を満たす場合) | 所得税基本通達36-21 |
| 現金 | ★全額が給与として課税 | 国税庁タックスアンサーNo.2591 |
| 商品券 | ★券面額が給与として課税 | 国税庁タックスアンサーNo.2591 |
| 従業員が自由に選べる形式 | ★品物の価額が給与として課税 | 国税庁 質疑応答事例 |
非課税になる3つの要件
国税庁のタックスアンサーNo.2591では、永年勤続表彰の記念品が非課税として扱われる要件を次のように示しています。3つすべてを満たす必要があります。
- 勤続年数:「勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること」
- 表彰の間隔:「前に表彰したときからおおむね5年以上の間隔があいていること」
- 金額:「その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること」
3つ目に具体的な金額の上限は示されていません。「社会一般的にみて相当」という相対的な基準です。勤続年数や役職によって妥当な水準が変わるため、一律の金額で線を引くことはできません。ここが判断に迷う点で、社内規程を作る際は税理士に確認しておくと安全です。
★「自由に選べるカタログ」は非課税にならない
ここが最も誤解されやすい点です。「現金や商品券がだめなら、カタログから選んでもらう形なら大丈夫だろう」と考えたくなりますが、国税庁はこれを認めていません。
国税庁 質疑応答事例「自由に選択できる永年勤続者表彰記念品」より
一定金額の範囲内で自由に品物を選択させる方式について、国税庁は「記念品の金額の多少にかかわらず、その品物の価額を給与等として課税することとなります」と回答しています。理由として、自由に選べるなら「使用者から支給された金銭でその品物を購入した場合と同様の効果をもたらす」ためと説明されています。
令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく国税庁の見解です。
非課税とされている理由をたどると、この判断が理解できます。国税庁は記念品について「市場への売却性、換金性がなく、選択性も乏しく、その金額も多額となるものでない」から強いて課税しない、と説明しています。つまり「選べないこと」が非課税の前提になっているため、選べる仕組みにした時点でその前提が崩れます。
同じ考え方は創業記念品にも適用されています。創業50周年で全従業員に1万円分の商品券を配った事例について、国税庁は「商品券と引き換えに、商品を自由に選択して入手することが可能となりますので、商品券の支給については金銭による支給と異ならない」として課税対象と回答しています。
創業記念品との違い
永年勤続表彰と混同されやすいのが創業記念品です。金額の基準が異なります。
| 永年勤続表彰 | 創業記念品 | |
|---|---|---|
| 対象 | おおむね勤続10年以上の人 | 記念の区切りに際し従業員へ |
| 間隔 | 前回からおおむね5年以上 | おおむね5年以上の期間ごと |
| 金額 | 社会一般的にみて相当な金額(上限の明示なし) | 1万円以下(消費税等を除く・処分見込価額) |
| 根拠 | 所得税基本通達36-21 | 所得税基本通達36-22 |
創業記念品には1万円以下という明確な上限があります。永年勤続表彰にはこの数字がなく、勤続年数や地位に応じた相対判断になります。社内規程を1つにまとめようとすると混乱するため、別の制度として整理してください。
担当者が実務で確認すること
- 表彰の対象年数がおおむね10年以上になっているか
- 2回目以降の表彰が前回からおおむね5年以上空いているか
- 渡すものが会社が選んだ現物になっているか(従業員に選ばせていないか)
- 社内規程に「記念品料○万円」など金銭での支給が書かれていないか
- 金額が勤続年数や地位に照らして説明できる水準か
- 課税対象になる渡し方をした場合、源泉徴収の処理が漏れていないか
4つ目は見落としやすい点です。社内規程に「勤続20年で記念品料5万円」と書いてあり、実際に現金で支給している会社は珍しくありません。この場合、規程の書き方そのものが課税前提の運用になっています。
制度の対応と設備投資をあわせて検討する
従業員の処遇を見直すタイミングは、職場環境そのものを点検する機会でもあります。高年齢の従業員が多い職場では、エイジフレンドリー補助金と指針で設備改善に補助金を使える場合があります。あわせて職場の熱中症対策義務化もご確認ください。
よくある質問
カタログギフトを記念品にすれば非課税になりますか?
従業員が自由に品物を選べる形式であれば、非課税にはなりません。国税庁は「一定金額の範囲内で自由に品物を選択させる」方式について、金額の多少にかかわらず品物の価額が給与として課税されるとの見解を示しています。非課税として扱えるのは、会社が選んだ現物の記念品です。
勤続5年の表彰でも非課税にできますか?
非課税の要件は「勤続年数がおおむね10年以上である人を対象としていること」です。勤続5年を対象とする表彰は、この要件を満たしません。表彰そのものを行うことは自由ですが、記念品の課税上の扱いは分けて考えてください。
いくらまでなら非課税ですか?
永年勤続表彰の記念品について、国税庁は具体的な上限額を示していません。「その人の勤続年数や地位などに照らして、社会一般的にみて相当な金額以内であること」という基準です。なお創業記念品については1万円以下という基準が示されており、両者は別の扱いになります。
現金で渡してしまった場合はどうなりますか?
その全額が給与として課税対象になり、会社に源泉徴収の義務が生じます。すでに支給済みで処理が漏れている場合は、顧問税理士または所轄の税務署に相談してください。過年度分の取扱いは個別事情によって変わります。
職場の制度づくりで、あわせて確認したいこと
永年勤続表彰は、従業員に長く働いてもらうための制度です。同じ目的で職場環境を整える取り組みには、法令上の義務や補助金が用意されているものがあります。
| テーマ | 担当者が確認すること | 解説記事 |
|---|---|---|
| 高年齢者の労災防止 | 2026年4月から努力義務。補助金の対象設備がある | エイジフレンドリー補助金と指針 |
| 熱中症対策 | 2025年6月から罰則付きで義務化 | 熱中症対策義務化で会社が行うこと |
| 感染症対策 | 報告体制と欠勤・復帰の判断基準 | 職場の感染症対策チェックリスト |
| 災害・停電 | 止めない業務の順番と必要な備品 | 会社の停電対策 |
| 冬季の防寒 | 会社支給品の選び方と人数別数量 | 工事現場で会社が用意する防寒備品一覧 |
| 職場の空気環境 | 加湿・換気・空気清浄機の役割の違い | オフィスの湿度管理 |
関連ページ
参照した一次情報
本記事は令和7年8月1日現在の法令・通達等に基づく国税庁の公表資料を整理したものです。税制は改正される場合があります。個別の取引や自社の規程への適用については、顧問税理士または所轄の税務署にご確認ください。最終更新:2026年9月2日


